「美肌をつくる美肌菌の働きを知る」~美しい肌は身体の内側と外側両面からアプローチ~
医学的に正しいエビデンスの基づく美肌術
もっと詳しく知りたい。美肌菌の種類と働きQ&A(前半)
美肌の鍵を握る美肌菌 についてこれまでのお話で、食事で腸内環境を整えることが、美肌菌の住む家を快適にすることにつながると理解していただけたかと思います。では、その美肌菌の正体とは、どこにいて、どんな働きをしているのか。美肌菌についてQ&A形式でより詳しく学んでいきましょう。
◇美肌菌って何ですか?
☞最初にもお伝えしましたが、このブログでは肌の美しさに直接的あるいは間接的に関係している菌を「美肌菌」と総称しています。主に腸内に存在する善玉菌と肌に存在する常在菌を意味します。前者が内側の美肌菌で、後者が外側の美肌菌と言えるでしょう。
◇内側の美肌菌と外側の美肌菌はどう関係し合ってるんですか?
☞ 腸内細菌は、体の様々な機能や、健康レベルに関係しています。もちろん、肌の健やかさ、美しさにも大きく関係します。医学的には、「腸内の〇〇〇という菌の数が増えると、肌の潤いのもとになる菌の数も増える」というような直接の関連性を示唆する研究はまだなされていません。
しかしながら、腸内細菌のバランスが整う(善玉菌が優勢になる)と、血流が改善し、自律神経のバランスが整い、免疫機能の働きが改善することがわかっています。血流が改善すれば、肌の隅々にも栄養が行き渡るようになり、外側の美肌菌が正常に働ける条件が整います。
また、自律神経のバランスが整えば、メンタルが安定し、肌の状態も安定しますので、外側の美肌菌が住みやすい環境を維持することができます。さらに、免疫力がアップすることで、肌細胞のバリア機能が強化されますので、肌荒れや敏感肌などのトラブルは解消するでしょう。このように、内側の美肌菌は外側の美肌菌の働きを裏方としてアシストしていると考えてください。
◇腸内環境が悪いと肌が荒れるのはなぜ?
☞腸内の中で悪玉菌優性の状態であったり、便秘によって古い宿便が溜まってしまっていると、それらの老廃物が血流にのって栄養素とともに全身に送られてしまいます。ところが、こうしたドロっとした質の悪い体液は、細胞に取り込まれることはなく、細胞と細胞の間に溢れ出るような形で蓄積されていきます。
顔に関して言えば、むくみやたるみを引き起こし、老け顔の原因になってしまいます。ちなみに、まだ医学的に実証されてはいないのですが、「人体で働く様々な菌たちの司令塔になっているのが腸内細菌である」という説があります。今後の研究が待たれるところですが、私たちの健康や美容のベースにあるのが腸であるということは、これまでの臨床試験においても大いに実感しています。
◇腸内細菌のうち、美肌に関係するものにどんな種類がありますか?
☞私たち人間の腸内細菌は1000種類以上、約100兆個もの数が生息しており、それらのうち約20%が善玉菌、約10%が悪玉菌、残りの約70%がその時々で働きを変える日和見菌と言われています。このうち善玉菌はすべて健康的で美しい、肌に欠かせない美肌菌だと思っていって過言ではないでしょう。
腸内に存在する善玉菌のうち代表的なものが、乳酸菌、酪酸菌、ビフィズス菌、糖化菌などです。これらの善玉菌が助け合って腸内細菌叢を整えています。日和見菌にはレンサ球菌、バクテロイデスなどの種類があります。これらの菌は体調の変化に応じて優勢な側につくのが特徴となり、体調管理がよく腸内で善玉菌が増えると善玉菌の味方をしてくれます。
逆に悪い食生活や不摂生で悪玉菌が増えると、一転して悪玉菌の味方になってしまいます。
<美肌に関係する主な腸内細菌>
1.乳酸菌
働き:落酸菌と共生することにより、活発に増殖して腸内の有害菌を抑制する。
美肌への効果:整腸作用があり、腸内環境が整うことで栄養の吸収が良くなる。その結果、末端の肌や髪にも十分な栄養が行き渡るようになる。また、便秘が改善されることで、体内の不要な物質や有害物質がきちんと排出されるようになり、肌荒れしにくくなる。
2.落酸菌
働き:腸粘膜の健康に大切な短鎖脂肪酸を作り出す。
美肌への効果:腸内に酪酸菌が多いとアレルギー症状が抑えられ、免疫力がアップするなどトラブルに強い健康な肌作りには不可欠。また、ダイエット効果もあると言われており、美容のためには特に重視したい菌。
3.ビフィズス菌
働き:ビタミンB群やビタミンK、強い殺菌力を持つ酢酸などを作り出す。
美肌への効果:ビフィズス菌が作り出すビタミンB群は美肌作りに欠かせない成分。ビタミンB2は肌のターンオーバーを促し、B6は炎症予防作用、皮脂分泌量のコントロール作用などで肌荒れを防ぐ働きがある。
4.糖化菌
働き:腸内の乳酸菌、落酸菌、ビフィズス菌などの有益菌を増やす。
美肌への効果:糖化菌が 炭水化物(でんぷん)から作り出す糖が、ビフィズス菌や乳酸菌などのエサになる。美肌作りの鍵となる善玉菌の増殖をサポートする役目を担う。
◇自分の腸内細菌の状態がいいのか悪いのか、簡単にわかる方法はあります?
☞「気持ちのよいお通じ」があるかどうかでわかります。実は、毎日必ずお通知があるかどうかは関係ありません。たとえ毎日便が出ていても、硬いコロコロとした便しか出ない、残便感がある、力まないと出ないといった状態なら、それは便秘であり、腸内細菌の状態が良くないサインです。
また、いつもゆるゆるの便ばかり出る、お通じの際にキレが悪くスッキリしないなど、下痢に近いタイプの場合も同様です。毎日または3日に1度程度でも、すっきりと気持ちの良いお通じがあれば、腸内細菌の状態は良いと言えます。
もっと詳しく知りたい。美肌菌の種類と働きQ&A(後半)
◇肌にいる菌が少ないほど、肌はキレイになりますか?
☞一般的に菌というと「雑菌」を連想し、有害なもの、汚いものというイメージがあるかもしれませんが、決してそんなことはありません。腸内細菌で言うところの「善玉菌」「悪玉菌」のように、人体に良い働きをしてくれる菌があれば、悪さをする菌もあるのです。
また、単純に善玉、悪玉とは言い切れない菌もたくさんいます。 例えば、皮膚の常在菌(人体に存在している菌で病原性のないもの)のうち、「アクネ桿菌」は皮膚を弱酸性に保ち、悪い細菌が増殖するのを抑える役目を果たしています。しかし、このアクネ桿菌が何らかの原因によって過剰に増えてしまうと、ニキビなどの原因となるのです。
つまり、大事なのは「バランス」で、徹底的に洗顔して肌から菌を排除すれば美肌になるなどということはありません。
◇肌の常在菌はどんな働きをしてるの?
☞私たちの皮膚には多くの常在菌が潜んでいますが、代表的なものが「 表皮ブドウ球菌」、「アクネ桿菌」、「黄色ブドウ球菌」の3種類です。これらの菌は共生しながら、菌の持つ酵素により皮脂を分解して、皮膚を保護する物質を作り出し、バリア機能を保つ役目をしています。
<肌の常在菌>
1.表皮ブドウ球菌
働き:皮膚表面や毛穴に存在する。 汗や皮脂をエサにして、美肌に欠かせないグリセリンや脂肪酸を作り出す。グリセリンは肌の保湿成分として働き、皮膚のバリア機能を高める。脂肪酸は肌を弱酸性に保ち、抗菌ペプチドという物質を作り出すことで、ニキビなどの肌荒れを防ぐ。
◆菌のバランスを崩すNG習慣
☞顔の洗いすぎ、洗顔料・洗浄料の過剰使用、長時間の入力、 無理に角質を落とすようなセルフケア(剥がすタイプのパックやピーリング)のやりすぎなど。
2.アクネ桿菌
働き:毛穴や皮脂腺に存在し、皮脂をエサにしてプロピオン酸や脂肪酸を作り出す。これにより皮膚が弱酸性に保たれ、肌トラブルの元になる細菌の増殖が抑えられる。一般的にはニキビの原因として悪者扱いされるが、過剰に増殖しなければニキビの原因にはならない。
◆菌のバランスを崩すNG習慣
☞洗顔、洗浄不足(ただし、顔の洗いすぎもNG)、油っこい食べ物の取り過ぎなどの偏った食生活、不規則な生活習慣、ストレス。
3.黄色ブドウ球菌
働き:皮膚表面や毛穴に存在する。存在しているだけではトラブルにならないが、紫外線やストレス、タバコ、過剰なスキンケアなどによって皮膚がアルカリ性に傾くと、増殖した肌荒れやアトピー性皮膚炎などの問題を引き起こす。
◆菌のバランスを崩すNG習慣
☞紫外線、ストレス、喫煙。過剰なスキンケアなどの皮膚への刺激。
◇菌によって肌トラブルを受けるのはどんなとき?
☞ 湿疹や傷などで表皮が破壊されると、外から悪さをする菌が入り込み、肌トラブルが起きます。また、全身の問題として、免疫力が低下しているときにも菌が入り込みやすくなり、肌トラブルが起きやすくなります。病的な要因ばかりでなく、睡眠不足、疲れ、ストレスといった日常的なことでも免疫力は低下します。
さらに、先に説明した常在菌のバランスが崩れることでも、肌の状態は悪化します。そのため、肌も腸と同様に、菌のバランスを崩さないように生活する工夫が必要です。
◇肌の常在菌のバランスでいちばん重要なのは?
☞肌の常在菌のうち、美肌を保つために最も重要な働きをしているのが表皮ブドウ球菌です。したがって、肌のケアにおいては、表皮ブドウ球菌の数を減らさないということが最大のポイントになります。NGなのはずばり「顔の洗いすぎ」一日のうち何度も洗顔する、強力な洗浄力を持つ洗顔料を毎日使うなどの行為が表皮ブドウ球菌の数を減らしてしまいます。
なお、正しい洗顔方法については、後ほど紹介していきますので、その内容も参考にしてください。また、表皮ブドウ球菌は肌表面の角質層に存在しているため、無理に角質を落とすようなケアもご法度です。スクラブ入りの洗顔料やはがすタイプのパック、市販のピーリング剤などを愛用している人は、使用頻度多くても週に1回程度に控えるようにしましょう。
◆その他、常在菌のバランスに気をつけるべき点は?
☞表皮ブドウ球菌の数を減らさないことに加え、過剰増殖による肌トラブルを引き起こすアクネ桿菌、黄色ブドウ球菌が増えないように気をつける必要もあります。これらの菌は、紫外線、タバコ、合わない化粧品、スキンケアのやりすぎといった外部刺激のほか、バランスの悪い食事、不規則な食生活習慣、ストレス、不衛生などによって増えすぎてしまいます。
これらの要素をできるだけ避けるようにしましょう。最も気をつけるべきは、やはり洗顔で悪玉菌である黄色ブドウ球菌を増やさないように、清潔性を保ちながらも肌をトラブルから守る役割も担っているアクネ桿菌を減らしすぎないような正しい洗顔方法を知ることが必要です。丁寧さを心がけつつ、洗顔のしすぎやゴシゴシ洗いは絶対に下げるようにしましょう。
次回、「美肌づくりの特効2ステップメソッド」~美肌菌育成プログラム~
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