肌の潤いを取り戻す　バリア機能と健康な肌を内側から蘇らせるために知っておきたい肌のしくみ

素肌力②肌の潤いを守る力「バリア機能」

潤いをたっぷり抱えてキープする肌は健やかで強い肌をいえます。バリア機能には、外的刺激や紫外線をブロックして体を守る役割と同時に、内側からの肌にうるおいを逃がさないように役割もあります。ターンオーバーの低下が、見た目の悪化と表面的な肌トラブルを招くのに対し、バリア機能の低下はヒリつきや赤み、炎症といった深刻なトラブルに繋がります。

また、水分を与えてもその潤いを守るバリアがなくなるので乾燥しやすくなりますし、肌の大敵である紫外線のダメージがダイレクトに肌内部に到達してしまいます。水分と油分のバランス、弾力、キメなどにも深く影響し、シミやシワ、たるみなどを発生させて、老化を早めます。

バリア機能の中でも潤い保持を主に担っているのが、皮脂膜とＮＭＦ（天然保湿因子）、そして細胞間脂質になります。皮脂膜は、皮脂と汗が混ざり合ったもので、肌の表面に天然の保湿膜を形成し、中から潤いが逃げるのをセーブします。また、角質内にあるＭＮＦは、潤いを抱え込んでキープしてくれます。

さらに重要なのが、セラミドやコレステロールなどから構成される細胞間脂質になります。多層に重なる細胞の隙間を埋めて、水分の逃げ道を物理的にふさいで、蒸散を防ぎます。さらにセラミドには水分を抱え込む作用もあります。

バリア機能を低下させる原因とは

乾燥とバリア機能の低下には相互関係があります。大きな原因は乾燥になり、潤いを守る＝乾燥を防ぐためのバリア機能は、肌が乾燥することで低下しさらに乾燥が悪化するという負のスパイラルに突入します。肌の乾燥は、空気が乾くことで起こるほかに加齢によっても進みます。赤ちゃんの頃はなかったスキンケアが大人になると必要になるのはそのためです。

さらに洗いすぎるのも乾燥をひどくさせ、メイクのスタート年齢も若年化に伴い、クレンジングのデビュー年齢も早くなっている今は、中学生も高校生でもメイクをするなら保湿を中心としてお手入れを始めたほうがいいでしょう。

ＮＭＦは身体の外から補給できるのか

似たような性質を持つ成分が働きをフォローしてくれます。角質の細胞の間に分散して存在するＮＭＦ（天然保湿因子）は、肌の潤いを守る主力成分でありながら、顔を洗ったときなどに流出しやすい性質があります。もちろんバリア機能がしっかりしていれば流出を防げます。

しかし、乾燥などによりバリア機能が低下すると、弱った部分からどんどん流れ出てさらに乾燥を進めます。そこでおすすめなのが、似たような性質を持つアミノ酸やグリセリンなどをスキンケアで補給することです。肌の中に入ってＮＭＦの働きを補ってくれます。

さらに細胞の間を埋めてくれているセラミドを補うと、より効果的に乾燥を防ぎ、バリア機能を強化できます。

化粧品が肌に「効く」とは

効いてはいけなかったはずが「効く」ようになったので、正しい化粧品選びに努めましょう。そもそも薬事法で定められている化粧品とは「健康状態の維持」が目的で「人体に対する作用が緩和なもの」という基本方針があります。具体的にいうと、水分保持や紫外線カットなどもともと肌に備わっている機能を補完するものです。

つまり、肌に「効く」ものではないとされていたのです。ところが近年、皮膚科学研究が進むと同時に化粧品開発もすさまじく発展して、今までの化粧品にプラスアルファの機能が加わるようになったのです。角層だけでなく、表皮やそのまた奥にまで働きかけられるようになりました。

美白効果を与えたり、シワを薄くすることが可能になって、「効く」化粧品が増えているのです。だからこそ、健康な肌を作るために、正しい化粧品を選ぶ目を養う必要があるのです。

バリア機能を高めるために「保湿ケア」を取り入れる

バリア機能をアップする点に欠かせないのが保湿で、具体的には「水分を補う」「細胞間脂質を補う」「油分でフタをする」の３つを指します。平たく言えば、水と油を顔に塗るということになります。化粧水で水分をたっぷり肌に与えたからというのは保湿としては不十分なのです。

セラミドやコレステロールといった角質細胞の隙間を埋める細胞間脂質や、その生成を促す成分が入った化粧品を選び、水分を抱えて逃がさない力を強化しましょう。さらに油分でのフタも大切であり、私たちの肌は皮脂と汗で形成される皮脂膜で潤いの蒸散を防ぐ保護ヴェールとしています。

しかし、皮脂の分泌は年々減って十分に蒸散が防げなくなっていきます。また、きちんと表面が油分でおおわれていないと、潤いを守ろうとして過剰に皮脂が分泌されオイリー肌や混合肌に脂質が傾いたりします。しっかりと保湿ケアをすることで水分・油分のバランスの整った健やかな肌になれるのです。

潤いを逃さずキープするために基本のお手入れ

基本は「化粧水」→「美容液」→「乳液・クリーム」→「ＵＶケア（朝のみ）」となります。ポイントは水分から油分へと移行していくことです。化粧品を効かせるためには正しい順番でつけることが大切で、水分と油分だけをつければいいかという考えはよくありません。

水分である化粧水からにするのは、先に油分をつけると肌の表面が油膜でおおわれて、水が浸透しません。洗顔直後の肌に化粧水をつけると水分が行き渡り、次に使うアイテムが浸透しやすい状態に整えられます。次に必要な美容成分をたっぷり含んだ美容液で肌に補給し、最後に与えた潤いを密封するための油分を塗りましょう。

何種類かの化粧品を重ねる場合は、シャバシャバした水っぽいものが先で、クリーミーな脂っぽいものを後にしましょう。異常が基本になりますが、最近は乳液→化粧水を推奨したり、洗顔直後に使うブースターがあったりと化粧品が様々に進化しているので、迷ったら説明書をよく読んで使用方法を守りましょう。

また、紫外線はバリア機能を低下させます。紫外線を浴びると肌は自らを守るために角質を厚くしてブロックしようとします。すると潤いは浸透しにくくなる上に保湿能力も落ち、さらに刺激を受けやすくなって乾燥が激化します。ターンオーバーも乱れ、内部からは炎症も発生しやすくなるので、保湿とともにＵＶケアも必須となります。

素肌力③根本から肌を作る力「健康な肌」を手に入れる

細胞にプログラミングされて肌本来の機能を発揮させるために必要なことを知りましょう。肌は無数の細胞でできています。そして、一つ一つの細胞が元気でいてこそ肌本来の力を発揮することができ、ダメージに負けないしなやかで強い肌が育ちます。しかし、細胞に元気がなければターンオーバーは乱れます。

さらに、バリア機能も低下して、肌全体が不調になるでしょう。肌表面を覆う角質は、角化細胞（ケラチノサイト）が分化した角質細胞のことで、そのおおもととなるのは、表皮幹細胞です。表皮幹細胞は基底細胞に変化すると同時に、自分自身のコピーを作り出します。そのため、この表皮幹細胞は永遠になくなりません。

さらに基底細胞は、角質細胞へと変わっていく最初のステップで基底細胞に活力がなければ、次のステップに進めず途中で細胞間脂質やヒアルロン酸などの潤い因子を作り出すことができません。また、真皮には真皮幹細胞があり、ここからは線維芽細胞が生まれます。

繊維芽細胞は、ハリや弾力の元になるコラーゲンやエラスチンを作り出し、またヒアルロン酸などの生成にも関わっています。すなわち、細胞が元気で健康であることが、健やかな肌の基礎となるのです。

あなたの肌が生まれ変わるには

表皮はターンオーバーにより、真皮は産生と分解で新しく生まれ変わります。表皮のベースは、真皮との境目にある表皮幹細胞で。ここから基底細胞が生まれ、姿形を変えながら新たにできた基底細胞によって押し上げられます。その途中で有刺細胞や顆粒細胞などとなり、最終的には角質細胞となって肌の最表面に上がります。

その後、自然なターンオーバーで剥がれ落ち、次の新しい角質細胞に世代交代します。真皮では、真皮幹細胞がコラーゲンやエラスチンの産生と分解を繰り返すことで、肌が生まれ変わっています。これらの細胞の産生能力が落ち、生まれ変わりがスムーズでなくなるのが老化です。

流行りの細胞コスメ、遺伝子コスメとは？

肌の大元である細胞に働きかける最新技術を使ったコスメのことです。”肌の遺伝子に着目した細胞の修復作用を助ける”といったことをうたった化粧品が、続々と登場しています。これらは何をしてくれるかというと、幹細胞が分化する際に自分自身もコピーすることに着目しています。

このコピーのスピードを早めたり、コピーが上手にできるように手助けしたりします。その結果、新しい健康な細胞が作り出せるのです。また、コラーゲンやエラスチンなどを分解する酵素の働きを邪魔したり、老化を抑制する長寿遺伝子に着目したものもありますが、まだまだ研究が進む分野といえます。

食事で積極的に摂りたい栄養素

肌のためにビタミンを摂るという人は多いと思いますが、肌の細胞を作るのにいちばん必要なのは、実はタンパク質なのです。私たちの肌の細胞は、約２０種類のアミノ酸が原料であり、アミノ酸はＮＭＦ（天然保湿因子）の素にもなります。個のアミノ酸の集合体がタンパク質になります。

カロリーを気にして肉を摂らないというのは大きな間違いで、最近の女性は誤ったダイエット法や食生活が原因で、タンパク質不足の人が多いと言われています。タンパク質は肌の細胞の源で、肉や魚、卵、大豆などにも含まれる良質なタンパク質を摂るように心がけましょう。

健康な細胞を育てるための「抗酸化ケア」

健康な細胞を育てるためには、何より食事が大事であり、細胞の材料になるタンパク質やそれを肌に変換するためのエネルギーになる炭水化物、すこやかな肌への変換を助けるビタミンやミネラル、潤いの素となる脂質をバランスよく摂ることが必要になります。

それと同時に細胞にダメージを与える大敵である外的要因トップの「紫外線」と、内的要因トップの「活性酸素」から肌を守る必要があります。紫外線は細胞の核に傷をつけるほか、活性酸素を発生させます。そして活性酸素は細胞をサビさせて機能を狂わせたり、細胞の生まれ変わりを手助けする酵素の働きを邪魔して老化を加速させたりします。

そこで取り組んでほしいのが、「抗酸化ケア」でビタミンＡ・Ｃ・Ｅやリコピンやアスタキサンチン、ポリフェノールなどの抗酸化成分をスキンケアの際に肌に塗ったり、食事などで摂取することで細胞がサビるのを防ぎ、活性産のダメージから肌を守ります。

また、活性酸素を発生させる紫外線をカットすることも大切で、細胞の原料を摂取しつつ、ダメージを防ぐのが正解です。

活性酸素のダメージを防ぐ①専用の美容液

抗酸化成分を肌に塗って健やかな細胞を守り育てます。ビタミンＡ・Ｃ・Ｅやポリフェノール。コエンザイムＱ１０、プラセンタなど、抗酸化作用の高い成分が配合された化粧品を使いましょう。直接肌に塗ることで、肌に発生する活性酸素を抑え、肌のスムーズな生まれ変わりや修復をサポートし、エイジングを防ぎます。

肌にもともと備わっている抗酸化力が年齢とともに低下するということもあり、シワもたるみもにも全方向から老化に働きかけるエイジングケア美容液の多くに含まれています。

活性酸素のダメージを防ぐ②ＵＶケア

汚染物質もブロックできるものや抗酸化成分入りのものがおすすめです。活性酸素が発生する最大の原因は「紫外線」です。バリア機能を破壊し、メラニンの生成を促すなど、様々な悪影響を肌に及ぼす紫外線は、日焼け止めを塗ったり日傘をさしたりしてしっかりブロックしましょう。

日焼け止めを選ぶ際には、抗酸化成分が入っているか注目してください。また、紫外線とともに活性酸素を発生させる原因となる汚染物質もブロックできるものも最近では開発されています。日焼け止めはなるべく、最新のものを賢く選ぶようにしましょう。

活性酸素のダメージを防ぐ③正しい食事

抗酸化成分を含む食事をとり、酸化したものはできるだけ食べないように心がけましょう。トマトのリコピンや、鮭のアスタキサンチン、緑茶のカテキンなどは優秀な抗酸化成分になります。抗酸化ビタミンであるビタミンＡ・Ｃ・Ｅなどを含む野菜やフルーツなどとともに意識的に摂るのが効果的です。

また、酸化した食べ物は口にしないことも重要で、とくに気をつけたいのが空気に触れるとどんどん酸化する油で、ポテトチップスや揚げ物などのはＮＧです。亜麻仁油やえごま油など、身体にいいとされる油も開封したら早めに使い切りましょう。

「抗糖化」もセットで取り組む

抗酸化と一緒に取り組みたいのが「抗糖化」になります。細胞にダメージを与える影響は９：１で圧倒的に酸化のほうが大きいですが、糖化も見過ごせない要素になります。白飯やパスタなどの食事、甘口のワインやビールなどの飲酒で糖質を摂りすぎると、その糖分がたんぱく質にくっついて変性します。

これを糖化と呼び、身体に動脈硬化などの悪影響を与えます。肌にとってもゴワつきや黄ぐすみを発生させる要因となるので、日ごろ糖質を摂りすぎている人は要注意です。

次回、「美しく健康な肌に必要な栄養素」～食事を疎かにすると老化が加速する～