「オーガニック」だから安心とは限らない！日本で発売されている化粧品の名称は欧米に比べ曖昧で特に基準はないことが多い

オーガニックコスメとは？

日本では「オーガニックコスメ」の定義はとてもあいまいです。ヨーロッパでは「Natrue」などのオーガニック認定機関というものが存在しており、それらの機関に申請して認可を受けたものしかオーガニックコスメを名乗ることはできません。

ですが、日本にはそのような機関は存在しないため、定義があいまいなまま色々な化粧品が販売されています。中には植物から抽出したエキスをたった１種類配合しただけなのに「オーガニックコスメ」と称して堂々と売られている商品もあり、ただ単に「自然派」ブームに乗っかっただけのものは少なくありません。

もともとオーガニックとは「有機農法」を指す言葉で、栽培の際に農薬や化学肥料を使わないで育てられた野菜を指す言葉でした。それなのに、食品ではない化粧品に対してこの言葉を使用するのは少し不思議だとは思いませんか。化粧品は畑に生えてくるものではなく、あくまで人工的につくられた製品なのです。

ヨーロッパでは、「化粧品の原料に使用する植物をオーガニック栽培したもの」のみで構成された化粧品を「オーガニックコスメ」と呼ぶそうです。日本の現状では、せいぜい「植物由来の成分を中心につくられた化粧品」という感じで認識されているように感じます。

さてこのような話から、あなたは日本のオーガニックコスメの現状に対してどのような感想を抱くでしょうか？「ヨーロッパのようにきちんとした認定機関を作ろう」と思ったかもしれません。ですが、実は完全なオーガニックの化粧品より、あまり植物成分に頼り過ぎない化粧品の方が肌には優しいといえるのです。

植物由来は安心・安全は本当なのか？

そもそも「オーガニック＝安心・安全」という固定観念がありますが、これは本当なのでしょうか？もともと「オーガニック栽培」というのは「野菜を育てる際に使用した化学肥料などが吸収されて作物に残留し、それを食べることで健康に悪影響が出るのではないか？」という発想で考案されたものです。

つまり、化学肥料などを使わないことで野菜の毒性を下げようとしたわけです。しかし、これは１９９０年にカルフォルニア大学の研究で明らかになったことですが、実はオーガニック栽培した野菜は化学肥料を用いた野菜よりもむしろ毒性が強くなってしまうのです。

これは植物が生来持っている力が関わってきます。もともと植物には、虫や外部の菌類から身を守るために「天然毒素」が含まれています。たとえば、ジャガイモの芽の部分には「ソラニン」という毒素が含まれていますし、森林で心地よい気分にさせてくれる「フィトンチッド」という芳香成分は、強力な防虫効果を持つ物質です。

このように植物には、それぞれ自身を守るための毒素が備わってるのですが化学肥料を使用して害虫などをあらかじめ殺してやるようにすると、毒素を増やして自分を守る必要がなくなるので、そういった天然毒素があまり作られなくなります。

それに対して化学肥料を使用しなければ、植物は自力で外敵に対抗しなければならないため、天然毒素が多くつくられるようになるというわけです。つまり、オーガニック栽培して植物は化学肥料こそ残留していないものの、もともとの天然毒素の量が多くなってしまうのです。これを考えれば「オーガニック＝安全・安心」という考え方はかなり怪しいと言えます。

精油配合には特に注意が必要

とはいえ食品の場合には、化学肥料でも天然毒素でも入っている量はたいして問題になるほどのものではありません。ふつうの化学栽培でつくられた野菜を食べても、オーガニック栽培した野菜を食べても、どちらにしても健康を左右するほどの影響はないと言えそうです。

ですが化粧品の場合はこれがそうとも言えません。なぜなら、化粧品に配合される「植物エキス」や「エッセンシャルオイル（精油）」などの植物由来の成分は、植物に含まれる芳香成分や毒素も含めた化学物質抽出したものだからです。

植物エキスはエタノールやＢＧなどの溶剤で限りなく薄められているのが一般的ですが、エッセンシャルオイル（精油）では抽出物をさらに「濃縮」しています。もし精油の原料がオーガニックで作った植物だったならば、ふつうの化学肥料等で栽培された原料より、植物由来の天然毒素が濃くなってしまう可能性が高いのです。

化粧品の「天然香料」と呼ばれるものも、基本的な主成分は精油です。ローズ油やベルガモット果実油、ティーツリー油など、花や果実・果皮、樹木などの名前がついているものが大半です。これらは適正量で用いればさまざまな薬効効果を持つ反面、高濃度で使用すると皮膚刺激が強く、アレルギーも引き起こしやすいです。

エッセンシャルオイルによる化粧品ならではの弊害

一種類ぐらいをほのかに香る程度に配合するならば、大きな問題はありません。しかし、何種類もブレンドして、さらに分量もたくさん配合すれば、敏感肌には負担がありますし匂いによっては自分も周囲も気分が悪くなってしまう可能性があります。

もちろん一般的な植物成分からは、こういった毒素はできる限り除去されますが、もともとの量が多ければそれだけ除去は難しく、残留量も増えやすくなるのは容易に想像できます。そのため、精油などの植物成分が多く配合されている化粧品には、敏感肌やアレルギー体質の人は特に注意しなければなりません。

もしそれが完全な「オーガニック原料」で作られた化粧品であったとすれば、そのような化粧品を優先して選ぶことは、みずからわざわざ危険を掴みに行くのと同じことです。

日本人には「ヨーロッパ流」は危険かも？

以上の理由から、完全にオーガニック原料で作られた化粧品があったとすれば、それはやはりいくらかリスキーだということになってしまいます。日本で化粧品のオーガニック認定機関がなかなか設立されないのは、日本の化粧品に携わる人々が、この事実をよく知っているからという背景があるのです。

ヨーロッパでは２０世紀末におおきな市民運動があり、社会に徹底的な化学物質批判の下地が出来上がりました。その影響から、化粧品でも植物由来の原料が好まれる風潮があるわけですが、正しく化粧品のことを学べば、オーガニック原料が必ずしも、優れたものではないということが分かるはずです。

日本人は欧米の人などに比べてとても肌が敏感なので、刺激が強くなりがちな完全オーガニックの化粧品はあまり推奨できません。日本で植物エキスが少量添加された商品が「オーガニックコスメ」として売られているのを見ると、「看板に偽りあり」として少し首を傾げたくなりますが、日本人の敏感な肌を守るためには致し方ないのかもしれないとも感じます。